2021年1月に実施されたPANCES研究プロジェクトに助言を行う海外アドバイザリーボードの会合について、その内容を記録した動画が公開されました。研究テーマごとや事例サイトごとの分かれています。以下よりご覧いただけます。会合のプログラムはこちらを参照ください。また、各アドバイザーからのコメントはこちらを参照ください。

全体概要
テーマ1の研究成果紹介
テーマ2の研究成果紹介
テーマ3の研究成果紹介
テーマ4の研究成果紹介
事例サイト(能登・佐渡)での研究成果紹介
事例サイト(北海道)での研究成果紹介
事例サイト(沖縄)での研究成果紹介

アドバイザーからのコメント

Eduardo S. Brondizio 教授 (米・インディアナ大学ブルーミントン校)

全体的なコメント

  • 2年前を振り返ると、皆さんが達成された成果にはとても感銘を受けた。
  • たくさんの要素を含む複雑なシステムの概念化がよくなされていた。分析手法を多く集めて技術的に発展させ向上させた点も印象深い。国レベルと地域レベルの双方で明確な結果を出していた。メッセージも明確で、ローカルでも評価をすることの重要性が示された。しっかりした結果が出ていて、国や地域をサポートする最善の方法を考えるという、プロジェクトの次のフェーズにも繋がる。このプロジェクトでトレーニングを受けた人や学位を取った人、国内や海外(アジアやIPBES)とのつながりにも感銘を覚えた。

テーマ別発表に対する質問・助言

  • 異なるシナリオにおいて、起こりえる土地利用変化のコンフリクトを特定すると、レジリエンスにも繋がる。
  • 自然資本のためには、都市の人口が他の地域と相互依存するような形で広く解釈されるとより平和的なのではないか。
  • 文化的サービスの分析において、水田で取れる米や漁業は供給サービスであるだけでなく大きな文化的価値があるので、これを考慮すると文化的サービスは向上するのではないか。Socio-Significant Ecosystem Serviceという概念は稲作や漁業の文化的価値や社会的価値を示すのに使えるのではないか。
  • 文化的サービスを訪問者で表すことも重要だが、実際の訪問者が少ないことが文化的価値の高さを表す例もある。例えばよりローカルのシステムや経済が伝統的な文化遺産として価値づけするような場所。そういった場所では訪問者の数と文化的サービスは相関しないのではないか。

事例地域の発表に対する質問・助言

  • これらのケーススタディには3つのレベルでの新規性(イノベーション)が見られた。 1)人口減少や管理方法のタイプ、農業の衰退などのトレードオフを考慮したこと。2)様々な新規性のあるローカルな取組を取り入れたこと。3)シナリオのダウンスケーリングなど分析的な点。
  • すべてのプロジェクトから得られた知見をまとめ、ケーススタディも加えたクロスカッティングのシンセシス・ペーパーを作るとよい。
  • プロジェクトは終わりになると思うが、この研究を踏まえ、今後の「科学プラン」を考えていくと良いだろう。

Simon Ferrier博士(仏・ユネスコ政府間海洋学委員会)

全体的なコメント

  • プロジェクトの進捗は大変すばらしい。
  • グローバルな側面につながるたくさんの要素の中で、陸域と海域の相互関係や、IPBESの科学者コミュニティで議論になっているNature Future Framework (NFF)を運用した実用的な好事例を示し、その中で伝統知・地域知が根付く暮らしの事例を用いたことなど、感銘を受けた点が多々ある。

テーマ別発表に対する質問・助言

  • スケールの問題は大きなテーマだが、どのくらい異なった(heterogenetic)現実が異なる地域や国の間で生じているのか。
  • 最も優れていた例は、陸域と海域の分析について、異なる生態系サービス間の相関の傾度を評価して、ある地域では正の相関があり、他の地域では負の相関があることを示していたこと。この違いをもたらすものについてもっと知りたいし、地域政策への示唆も重要。
  • 探索的に作られたシナリオをベースにもし全国が一つの方向に進んだら、という仮定で分析がなされている。地域の大きな違いを考えると、各地域で異なる政策を採用した組み合わせを真剣に考え、この分析を適用することが今後の大きな課題。この課題にどうアプローチしていくか。広域の政策デザイン手法や探索的手法は、国の大きな選択肢としてのシナリオを考える際には意味があるが、異なる地域ごとの方向性を考える上では違うアプローチになる。
  • 強調したいことは、技術面で、ESのモデリングに機械学習を使っていたことが大変興味深かった。この分析を振り返って、プロセスベースのESモデリングに機械学習を使うことにどんな強みと弱みがあったかなどに興味がある。
  • 海域の分析について、高解像度の環境データを分析することが、気候変動のESへの影響推計にどんな違いを生むのかを知りたい。

事例地域の発表に対する質問・助言

  • 異なるスケール、異なる地域で同様のシナリオを適用したことが興味深い。異なるスケールでどのようにシナリオ分析を行い、現実の政策立案に繋げていくかということを探求した初の試みだと思う。

Salvatore Arico博士(豪・オーストラリア連邦科学産業研究機構)

全体的なコメント

  • このプロジェクトのプロセスに継続的に関われて嬉しい。
  • ESやWell-beingに関する似たような国レベルのイニシアティブのモデルにしていくためには、現実性チェックが大事になってくると思う。他の国や他の地域でのこのプロジェクトを再現(replicating)することを考えていってほしい。

テーマ別発表に対する質問・助言

  • (テーマ1)シナリオを構成する2軸でのアプローチはとても有用と思った。例えば太陽光プラントに関する事例研究の結果などは、“モザイク”なアプローチの重要性につながると思う。
  • (テーマ1)これらの発見をプレゼンの中で、2軸(4象限の図)で視覚的に表現すると、様々な状況が混ざった“モザイク”な輪郭が見えてよいのではないか。それぞれの結果は必ずしも競合するものではないかもしれないが、よく生態プロセスがイラストによって表現されるように、いくつかの結果は“モザイク”なアプローチに向かっているように見える。
  • (テーマ2)この研究のインパクトについて、文化的サービスのモデリングとマッピングという、よく語られるがセンシティブな問題もあり、あまり研究者がやらない研究がなされていることに感銘を受けた。
  • (テーマ2)機械学習を使い、可視化するという両方の選択肢について、参加している研究者の皆さんにぜひこの方向性での研究と探索を続けてほしい。陸海連携の事例研究は里海の研究と解釈しているが、陸海連携についての伝統知的な説明と科学的な説明が素晴らしくまとまっていた。知識を生み・評価し・表現し、それらが相互に補い合うひとつのやりかたを示すよい例だと感じた。
  • (テーマ3)ブルーカーボンに関連する分析について 科学的側面と政治的議論との間で断絶がある。科学者の側は例えば藻類の役割などについても調査しているが、政治の文脈では褐藻類などはまだブルーカーボンとして考えられてない。ブルーカーボンについて、海藻やマングローブ、塩性湿地などのシステムについて語られていたが、この結果をもとに管理戦略の意思決定にどう情報を提供していくかをぜひ考えてほしい。国レベルから国際レベルの政策的介入と人々との間のリンクが重要になるから(例えば国連の気候変動枠組み条約の文脈で)。現段階では、パリ協定のもとで、ブルーカーボンについて国際的に貢献する余地がある。ただ科学者コミュニティが海藻やマングローブ、塩性湿地以外のブルーカーボンをあまり考慮できていない。
  • (テーマ3)将来的に複数のストレス因(Multiple-stress)を同時に扱う研究に発展できると素晴らしい。例えば気候変動と酸性化など、特定の複数のストレスがかかった場合の分析など。我々は海の問題とその解決のため、Multiple-stressアプローチに向かって進んでいる。
  • (テーマ3) 論文の数を数えて質については言及しないことも多いが、研究者としては質も大事。よりインパクトファクターで測られるようになっているので、その面でプロジェクトがどれだけ成功を収めたかを示すことも重要。
  • (テーマ4)包括的富のindexアプローチをとったことは素晴らしかったが、自然資本との関係性も大事。PANCESはCBDのエコシステムアプローチに沿ってESに着目する研究なので、自然資本へ着目する視点を失ってはいけない。日本の文脈では、地域的な差異はあったが、日本の知識が謙虚なやり方で、自然資本を日本の大事な要素として保っていると言えるのではないか。それは富といえるが(包括的富はGDPを超えて富を評価する指標として支援するが)、同じように自然資本に着目し続けることも重要なのではないか。

事例地域の発表に対する質問・助言

  • 先にコメントしたことがケーススタディについても当てはまる。ケーススタディは地理的にもまた課題も異なるので、ケーススタディ間の比較をしたペーパーがあるとよい。